外国人対応の取り組み ・・・地域を巻き込み巻き込まれた活動・・・(大阪府薬雑誌から転載)
2018-03-10


西淀川区は,阪神工場地帯として戦前より栄えた地域の一角にあり,周辺に大阪湾,そ れに注ぐ新淀川,神崎川の河口にあたります。 工場が多いことから,1990年代より外国人労働者とその家族を含む住民が増え始め,中でもブラジル人やペルー人が集中している地区でもあります。しかしながら,彼らは成人してから来日していることもあり,日本語の理解度が十分ではありません。そのため,医療を受ける際にも会社の通訳が付き添う必要があるなど,非常に不便な生活を送られています。
ゆうせい薬局は,大阪市の西端である西淀川区出来島にあります。きっかけは約2年前になりますが,外国をルーツにもつ子供たちのため,学習支援のボランティア活動をしているNPO団体:多文化共生センター大阪を知りました。その団体の活動に薬局として協力したことから,外国人住民の現状と問題点を理解することができました。そこで薬局として何ができるか,しなければならないかを考え,外国人対応の取り組みをまとめさせていただきました(図1)。
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◇指さし会話のポスターの制作(ポルトガル語,スペイン語)(図2)
ブラジルとペルーの公用語は,それぞれポルトガル語とスペイン語になります。前述のとおり,2国の出身者が集中していること,英語以外の他言語は,対応が非常に困難であることから,指さし会話のポスターを作成しました。ポスターには,ポルトガル語とスペイン語で「肩こり」や「頭痛」などの症状と,身体のイラストを添えて記載しており,指さしで互いに確認し合うことができます。スペイン語の翻訳には,近所に住むペルー人の女子高生に協力してもらいました。
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◇外国語薬袋の制作(英語,ポルトガル語,スペイン語)(図3)
薬物治療において重要なのが用法用量です。正確な服薬方法を伝えるために,薬袋は非常に大きなファクターになると考えます。そこで内服・外用・頓服の薬袋を,上記3ヶ国語に翻訳しました。チェックと数字を記載するだけで使用でき,シールにすることで通常の薬袋に貼付することができます。通常業務の流れを止めないような工夫をしています。実際に投薬しますと患者さんが非常に喜び,そして安心された表情をされます。また,約30名の方にアンケートをすると,84 % の方が「わかりやすい」との回答でした。
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◇5ヶ国語対応の初回患者質問票の制作(英 語,ポルトガル語,スペイン語,中国語,韓 国語)(図4)
初回来局時に,患者さんに記載していただく初回患者質問票があります。しかしながら, 日本語が読めない外国人の方は書くことができません。ましてや,わからないからと適当に書いてしまうことも考えられます。外国語ができるスタッフがいたとしても,対応に時間がとられることは避けたいところです。そこで,質問票の翻訳を考えましたが,1薬局だけでは正しい翻訳は困難であると考え,まず西淀川区薬剤師会に相談し,会の事業として進めることになりました。また,薬剤師会だけでなく,区役所にも協力いただき,西淀川区にあります「にーよん地域包括ケアシステム」の一環となるプロジェクトとなりました。翻訳については,区役所が外国人サポートボランティア翻訳チームに依頼し,それを国際交流センターに校正していただきました。工夫として,質問に対する回答をチェック形式とし,日本語が書けない場合は,ローマ字記載をお願いしています。是非,全国の薬局で使っていただきたいと思います。
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◇地域を巻き込み巻き込まれた活動に

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[2017年度]

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